ぎふ花と緑

馬渕洋蘭

馬渕洋蘭
馬渕正直さん

※現在は閉業しています。取材日:2023年1月26日

寒さに負けず 華やかに迎える「デンドロビューム」

①「子どもを嫁に出すように」。大切に花を育てて45年

 寒い季節に華やかな花を咲かせる「デンドロビューム」。少ない手間で1~3か月花が持つことから、初心者でも育てやすいラン科の花です。
 瑞穂市にある馬渕洋蘭の馬渕正直さんは、この花を45年にわたって栽培する大ベテラン。500坪で色や大きさの異なる約30品種を育て、年間1万5千~2万株を出荷。デンドロビューム生産では、県内で最大の規模を誇ります。
 「大事に世話をした花たちを出荷するときは、子どもを嫁に出すような気持ちになる。 花屋さんに守りしてもらって、誰かの手元に行くと思うとすごくうれしい。長くやっているけれど、その気持ちは変わらないね」。

 ハウスの中は、やさしい香りがいっぱいに広がります。馬淵さんは15年ほどサラリーマンとして働いたのち、花き栽培を始めました。現在ハウスが建っているのは代々受け継がれてきた土地で、祖父は梨、父は富有柿を栽培していたそう。「一代一代、みんな好きなことをやっている」と笑いながら話す。

②ここにしかない、理想の詰まったオリジナル品種

 一番人気は、白いふち取りのある濃いピンク色の花びらに、中央が黄色のデンドロビューム。「チャイナ ドリーム クリスタル」という品種です。
 チャイナ ドリーム クリスタルは、馬淵さんが育種したオリジナル品種。平成14~16年の毎月1週間、中国浙江省の杭州市にデンドロビュームの栽培指導に行っていたそうで、「その経験は私にとっても学びが多かった。だから『チャイナ』という名前を付けた」と話します。
 濃すぎずかわいらしさを残すピンクと黄色のはっきりした色の濃淡は、「花屋さんで思わず目に留めてしまう」というちょうどいい色合い。控えめなフリルと柔らかい香りも特徴です。「何種類も掛け合わせを試したね」。こうして咲いた、馬渕さん理想のデンドロビューム。平成21年に特許を取得しました。

③「またがんばろう」と励ましてくれるお気に入り見つけて

 デンドロビュームは、室温が5度くらいでも問題ありませんが、温度変化には弱いので、暖房の効いた部屋に移動することなどは避けましょう。玄関に置いておけば、帰宅したときにふわっと香りがただよい、心を癒やしてくれます。

 栽培で大切なのは、水をやりすぎないこと。土の表面が乾いた翌日の昼間に、コップ半分くらいの水で十分です。つぼみは上手に育てないと花が開く前に落ちてしまうので、しっかり咲いているものを買うことがおすすめです。 黄色くなった葉は自然に落ち、バルブ(茎)だけになります。春から秋は直射日光を避けて屋外へ。霜が降りる前に室内に入れましょう。生えてきた新芽がまた花を付けてくれます。「3代目くらいまでは元気だよ」とのこと。

 「花が綺麗に咲いているのを見ると、『自分もまたがんばろう』という気になれる」と話す馬渕さん。力をくれる花にありがとうの気持ちを込めて大事に育てれば、花はそれに応えるように長く咲き続け、次の年にまた、きれいな姿を見せてくれるでしょう。

 デンドロビュームは花の色や形だけでなく、鉢の大きさ、茎の高さもいろいろ。嫌なことがあった日も、帰宅したら話しかけたくなるような、そんなお気に入りを見つけてみては。

馬渕洋蘭

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