ぎふ花と緑

オグリ

オグリ
小栗 慎太郎さん

色とりどりの花々「セントポーリア」が優しく広がる姿を思い描いて

①花も葉も色も個性豊かに

「楽しそうに花を選んでいるお客さんの姿を見ると、やっていてよかったな、もっといいものを作らなきゃと思いますね」

 育てた鉢を手に目を細めるのは、就農7年目の小栗慎太郎さん。加茂郡坂祝町で父と叔父が始めた「オグリ」を継ぎ、友人2人とともにアフリカ原産の鉢花、セントポーリアを主に栽培。北は北海道、南は鹿児島まで全国へ向けて出荷しています。栽培期間は約10カ月。手間暇と愛情をかけて、年間を通して180~200種を育てます。ピンクや青、赤に緑、色とりどりのセントポーリアが2棟の温室に広がります。

 品種数は数万種といわれるセントポーリア。何千何万とさし葉をして株を増やしていく中で、突然変異が起きやすいことが特徴の一つだといいます。「例えばこれとか…」取材中に小栗さんが手にしたのは白のセントポーリア。もとは紫のセントポーリアでしたが、増やしていく内に変わったものだといいます。

葉や花のサイズ、形などもさまざまで、一つ一つのセントポーリアに個性があります。店頭やネットページでふと目にして「いいな」と思ったセントポーリアは、もしかしたらあなたと出会うためにあらわれたのかも…、そんなことも想像してしまいます。

②管理は簡単 植物のある生活を楽しんで

 セントポーリアは「室内花の女王」と呼ばれ、年間を通して室内で楽しむことができます。室内花の女王が色とりどりのドレスで日常に彩りを加えてくれるため、何輪も咲き誇れば、まるでリビングが舞踏会場のような華やかさになるでしょう。

 育てるポイントは、直射日光の当たらない室内の明るい場所で、週1回程度の水やり、適度な液肥と花摘みを行うこと。管理の簡単さに加え、1~2カ月、品種によっては半年の間、花を楽しむことができる点が、セントポーリアの魅力の一つだと小栗さんは言います。

 「セントポーリアに限らず、花や植物を見てほっとするような心穏やかな時間を楽しんでもらえたらと思います。もし、育てる中で枯らしてしまっても、だめだったな、私は向いてないなとは思わないで。いろいろな植物を手に取ってもらえたら」。

 厳しい業界事情を鑑みて父から「継がなくてもいいよ」と言われていた小栗さん。一般企業に就職するも、心の中には「35、6年かけて父や叔父がつくってきたものを終わらせてしまっていいのか」という迷いも…。そんな時に背中を押し、共に一歩踏み出してくれたのが、高校時代に仲の良かった同級生の2人でした。「一人ではできない、仲間がいないかと思っていた時に2人に相談したら、もったいないよね、自分たちで作って売ることができたら楽しいよね、と言ってくれて。そんな相手に巡り合えた僕も恵まれているなと」。

 そんな、小栗さんのこれからの目標は生産量を増やすことに加え、いろいろな世代の人にセントポーリアを知ってもらうこと。栽培も仲間と一緒に3人で“楽しく”取り組むことで「農業ってあんなに楽しそうにできるんだな」ということを、次を担う若者に伝えていきたいといいます。

 「自分たちが年を取って、若い子たちがやりたいって言ってくれたときに『おお、一緒に頑張ろう』と迎え入れられるようになりたい、そうゆう業界でありたいなと思います」。 全国でより多くのセントポーリアの花が咲き誇ることを願って。

オグリ
加茂郡坂祝町

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