- 久瀬小菊
- 長屋建志さん
心を込めたお供えに「久瀬小菊」
祖父から継いだ小菊栽培
揖斐川町の久瀬地域では、仏花として人気の小菊が盛んに作られてきました。山あいの気候を生かして育てられる小菊は鮮やかな色を放ち、日持ちも良いと評価されており、「久瀬小菊」と呼ばれています。
久瀬小菊の生産で現在、中心的な役割を担うのが、長屋健志さん。長屋さんの祖父は久瀬小菊の発展に大きく寄与した人で、長屋さんは祖父の背中を見て、小菊農家になることを決心しました。
過疎化や地球温暖化。環境がみるみる変化する中で、久瀬小菊を、農業という職業をどう未来につなげていくか。「『かっこいい、やりたい』と感じる若者が増えて、職業として農業が選ばれるようになってほしい」。そのためには収入やライフスタイルも重要。長屋さんは日々模索しながら、農業に向き合っています。
久瀬の風景を守りたい
山と山に囲まれ、谷間に位置する久瀬地域は、夕方になると周りの地域よりも早く日が沈みます。強い西日が当たらないことや、寒暖差が大きいことなどが、菊の生育には適しています。
長屋さんの育てる小菊の品種は70強。種類の入れ替えや品種の選定は、人気や作業効率の良さなど考慮して決めています。
現在の栽培面積は2ヘクタールほど。高齢等で世話しきれなくなった畑を周辺農家から任されることが増えており、できる限り受けるようにしているため、徐々に面積が広がってきました。譲り受けた農地が小菊に適していれば小菊を、そうでなければ、里芋や南天など、獣害被害が出にくいものや費用対効果の良いものを少量ずつ育てる形をとっています。
手をかけないと良いものはできない
24歳のときに就農した長屋さん。以来、祖父とともに生産を続けてきました。2019年に祖父は亡くなりましたが、今も妻と両親、繁忙期には母方の祖母も応援に駆け付け、家族で力を合わせて美しい小菊を全国へ届けています。
「人の都合で仕事をするな」といつも口にしていた祖父。相手(小菊) は生き物。自分たちの都合の良いやり方を選ぶのではなく、いつも小菊が今置かれている状況に合わせて世話することが大切だという考えです。
「例えば高温が続く昼間に水をあげたら小菊が弱ってしまうので、気温が下がった夜中に1人畑に来て、水やりをしたり」。
手をかけないと良いものはできない、という祖父の考えを長屋さんも身をもって理解し、受け継いでいます。
「若い方も、ぜひ気軽にお墓参りに行ってほしい」と呼び掛ける長屋さん。
参りと聞くとつい背筋を伸ばしてしまいますが、盆やお彼岸、命日に限らずとも、ふとしたときに身近で売っている小菊を手に取り、お墓に足を向けてみるのも、いいかもしれません。
Tsukiyo Flower
揖斐川町久瀬