ぎふ花と緑

昭幸園(東白川村)

カーネーション(切り花)
栗本重秋さん・栗本忠一さん

苦労の末に花開く「カーネーション」

① 市場の花が減る時期に必要な人のもとへ

 緑豊かな山間に位置する加茂郡東白川村。ここで花きを中心に栽培する農事組合法人 昭幸園では、岐阜県内で唯一、切り花のカーネーションを生産。立派なガラス温室に入ると、色や大きさの異なる10種類ほどのカーネーションが、空に向かって元気よく芽を伸ばしています。

 カーネーションと聞けば、5月中旬の母の日や8月中旬のお盆を真っ先に想像しますが、同園のカーネーションが花開くのは、これらから少し時期をずらした5月下旬と6月下旬、8月下旬の計3回。
 他の産地を見渡すと、温暖な地域は冬に育てて母の日に、冷涼な地域は初夏に育ててお盆に、というように、それぞれの気候を生かしながら、需要の高い時期に出荷しています。
 一方で、東白川村の気候はちょうどこの中間。ピークの時期とずれが生じますが、その分、必要としている人に届けられるという利点があります。
 岐阜と名古屋だけでなく、東京の市場にも出荷されています。

② 最新設備を整えるも時代に翻弄

 同園でカーネーションを栽培するのは、栗本重秋さんと栗本忠一さん。同じ苗字ですが、兄弟ではありません。今から45年以上前の1978年、ともに花き生産を始めた仲間です。

 ガラス製で山型の温室には、当時としては最新の環境制御システムを導入。風や光を感知するセンサーや、環境に配慮した冷暖房装置も完備。土壌は虫や病気になりにくい改良を施し、消毒は人への害がないよう、温室外でボタンを押せば完了するようにできています。

 とはいえ、岐阜の気候に合う品種や栽培方法を見つけるのは大変だったそう。さまざまな場所へ出かけ、見聞きしたことを参考にしながら、試行錯誤を重ねていきました。

 ある程度軌道に乗ったころ、バブルが崩壊。「どん底。家族にも迷惑をかけた」と重秋さん。それでも「こんだけのもん(設備)を最初につくったら、やめるわけにはいかん」と、できるところから対策を講じ、徐々に成果に結びついたことで、乗り切ることができました。

③ 愛情と情熱は誰にも負けない

 「愛情を込めて育てている。愛情は人に負けん」。それでも「100%いいものができた!と思えたのは、4、5回くらいしかない」と忠一さん。そんな厳しさの中にあるこの仕事の良さについて、重秋さんは「妻と一緒に仕事ができることかな。選花は妻が担ってくれている。ケンカはできんね」と照れくさそうに笑います。「大変なことはたくさんあったが、ここまで続けてこられて本当によかった」とかみしめます。

 今、直面しているのは運送の問題。山間地域の農家が作る決して大量にはない生産物を回収し、市場まで持って行ってくれる運送業者はなかなかありません。二人は数年前から、岐阜と名古屋の市場には自分たちで運ぶようになりました。時間はかかりますが、市場で見聞きした情報を自分たちの農業に生かそうとプラスに捉えています。
 笑顔の中ににじむ、時代の荒波で鍛えられた確かな強さ。年を重ねてもめげずに前を向く姿勢はそのままに、今日も花たちの待つ温室へと向かいます。

農事組合法人 昭幸園
加茂郡東白川村五加
TEL. 0574-78-2774

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