ぎふ花と緑

榊原農園(郡上市)

ユリ
榊原 敬介さん

高原で育む優美な“主役”「ユリ」

親子で始めた農園で

 ぷっくりとふくらんだつぼみから、力いっぱいに大きな花を咲かせるユリ。華やかな見た目と、甘い香りを放つことが特徴です。
 昼夜の寒暖差を生かし、郡上市高鷲町ひるがのでユリを栽培するのは、榊原農園の榊原敬介さん。24年ほど前に父と2人で農園を始めました。

 高原やスキー場で知られ、標高の高いこの地域。昼夜の寒暖差が大きいことで、発色の良い花が咲きます。色が良く出て丈夫に育った花は人気があり、榊原さん含むこの地域の農家でつくる「ひるがのフラワーサークル」が出す花は、市場からも重宝されています。

 農園を始めた当初はトルコギキョウを栽培していましたが、農地の特性などに合わせて現在はユリに専念。徐々に面積も広げ、現在は3反ほどで栽培しています。

高品質を守るには細部が大事

 榊原さんがユリを育てる上で大切にしているのは品質。4月に植え始め、収穫と出荷は7月から10月ですが、高い品質を守るためには、植え付けより前の球根選びが何よりも大事だそう。

 「球根でつぼみの数や姿形が決まってくるので、球根屋さんと相談しながら慎重に選びます」と榊原さん。さらに毎年、球根の質や特徴は変化するので、情報収集などをして見極めています。
 ユリの品種は1000ほどもあり、発色や形の良い品種を選ぶのも重要だといいます。

 榊原さんが語るユリの魅力は「1本で主役になれる花」。一番の特徴ともいえる大きな花がしっかり咲くよう、植え付け後の栽培や、花を切るタイミングにも気を配ります。

 「早く切り過ぎちゃうと、色が薄かったりする。タイミングを見計らって、ちょうど良い日を選んで切ります。一番良いときにお客さんのもとに届けたいので、うちでは出荷当日の朝に切って集荷場へ持っていきます」。
 出荷のピークはお盆前。早いときの収穫は朝の5時から始まります。家族と数人のパートさんで力を合わせて取り組んでいます。

いろんな種類を見比べて楽しんで

 高原地帯で豊かな自然環境があるとはいえ、年々厳しくなる夏の暑さや資材高騰で、ひるがのでの花の栽培も難しくなってきているのが事実。それでも「ひるがのフラワーサークル」がこれまで高い品質の花を育て、市場から大事にされているからこそ、「やれる限りは続けていきたい」と榊原さんは話します。

 「一言でユリというけれど、実は1000ほども品種があって、いろんな色や形がある。機会があれば、いろいろ見比べてみるとおもしろいと思います。少し高い花ではあるけれど、ぜひ飾って楽しんでいただけたらうれしい」。
 遠方で行われる球根の展示会にも足を運び、まだ名もない品種のユリにも目を向ける榊原さん。そんな榊原さんが心を込めたひるがの育ちのユリたちは、力をしっかりとそのつぼみに蓄え、たどり着いた場所で大きく花開き、見る人たちを魅了しています。

榊原農園
郡上市高鷲町ひるがの

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