- フウセンカズラ
- 近藤 省吾さん
根気と愛情が紡ぎ出す「フウセンカズラ」
養老山地の麓から
薩摩園芸を営む近藤省吾さんは、養老郡養老町で、季節に合わせたさまざまな草花を栽培しています。
近くに揖斐川が流れ、養老山地を望むおだやかな田園地帯。明るい日の光が差し込む7月、栽培していたのは紙風船のようにふくらんだ実を付ける、フウセンカズラです。
近藤さんの育てるフウセンカズラは、アサガオに使われるようなリング型の支柱にツルをくるくると巻き付け、かわいらしい形に仕上げているところが特徴です。
伸びていくツルをこまめに巻いていき、きれいな形に仕上げていくという近藤さん。ツルは1日に5センチほども伸びるので、1日この作業をやらなかったら大変なことになってしまうとか。
「とにかく根気良くやることだね」。
照り付ける日光もなんのその。つばの広い麦わら帽子を被り、もくもくと作業をこなす姿は、積み重ねてきた経験の豊富さを物語ります。
枝葉の中心をのぞくと、支柱の上からぶら下げられた風鈴が。かわいい魚のシールまで貼ってあります。
フウセンカズラの出荷シーズンは7月から8月初旬の暑い時期。涼しげな印象を与えるための工夫です。
枝近藤さんは1シーズンに500鉢ほどを仕上げ、市場を通して全国に届けています。
経験を重ねて多品種栽培へ移行
20歳のころに農園をつくり、50年近くも草花の栽培に向き合い続けてきた近藤さん。当初は栽培品目を1つに定めて育てていましたが、需要の変化など時代に合わせていくうち、多品種少量生産のスタイルに変わってきました。
フウセンカズラの時期が終わると、秋はパンジー、ビオラ、サクラソウなどの花々。冬場には門松などを作っています。そして冬を超えると、夏野菜の苗づくりに精を出す春がやって来ます。
「いろんな種類を育ててきた。変化しないと、どこにでもあるものを作っているだけではやっていけないから」。
今では全国どこからでも種を取り入れることができるので、珍しいもの、ご当地のおいしい野菜や果物の種や苗を取り寄せて栽培。バイヤーさんからも頼りにされており、問い合わせや注文が入ることも多いとか。
「種類が多いと、お客さんの選択する余地が広がる。やっぱりお客さんから聞く声がやりがいになる」と近藤さんは話します。
唯一無二の寄せ植えを制作
数種類の草花を栽培するほか、近藤さんのもう1つの大きな特徴は寄せ植えを手掛けていること。正月や桃の節句、端午の節句。シーズンごとのイベントに合わせたオリジナルの寄せ植えを作っています。
これまで近藤さんが作った寄せ植えは、1つ1つの花々が生き生きと華やかに配置されていて、かつ、どこか遊び心が混じった唯一無二の作品ばかり。穏やかに淡々と語る表情からは、言葉にせずとも、「草花が好き」という近藤さんの思いがしっかりと伝わってきました。
薩摩園芸
養老郡養老町大巻